リンデ歯周病学 抗生物質 歯周病

歯周治療における抗生物質4【リンデ歯周病学】

 

ポイント

リンデ歯周病学では『抗生物質に関して軽度から中等度の歯周炎での使用は避けるべきである。重度歯周炎の抗生物質投与は有効かもしれない』と結論付けています。

しかし、『薬剤耐性菌』や『マイクロバイオームの攪乱』という全身への大きな害が考えられるのに、歯周炎の治療に抗生物質を投与する必要はあるのでしょうか?
私には疑問が残ります。

歯周治療で抗生物質は必要なのか

私は、歯周治療で抗生物質を使用する必要はないと思っています。
その理由を以下に記します。

①抗生物質が全身に与える害が大きい

薬剤耐性菌の存在が問題になってかなりの年月が経ちますが、この問題は解決されるどころか日に日に大きくなっています。
抗生物質が引き起こすマイクロバイオームの攪乱やディスバイオシスが全身に与える影響も徐々に明らかになり、その危険性は想像以上に大きいのではないかと感じます。
それらの被害に比べると、抗生物質投与による歯周病の改善がそれほど重要であるとは思えません。

②特定の細菌を除去できない

歯周病に関連する微生物としてはp.ジンジバリスやA.アクチノミセテムコミタンスが注目されていますが、歯周病で使用される抗生物質はそれらの特定の菌に効果がある抗生物質ではなくて、その他の常在菌にも無差別に除去してしまいます。
全身投与された抗生物質は腸内細菌のバランスを崩し、マイクロバイオームの攪乱やディスバイオシスを引き起こすことになるわけです。

③歯周病原菌はいない

この章では過去の研究との兼ね合いもあり、歯周病原菌を除去する手段として抗生物質を考えています。
しかし、「歯周感染症」の章ではディスバイオシスが歯周炎の原因であると考えており、特定の菌を除菌すれば歯周炎を治せるという考え方とは一線を画しているように思えます。
その考え方に基づけば、歯周治療に抗生物質を使う必要性はほとんど無くなってしまうのではないかと思います。

④細菌数の減少は歯周炎の改善ではない

歯周治療の抗生物質の効果としてアタッチメントロスの改善を指標としている文献が多いようですが、はたしてそれが歯周炎が治ることにつながるのでしょうか。
歯周炎の本態は付着の喪失に始まる歯周組織破壊で、それに関与するのは生体の免疫学的応答であると考えられています。
そのメカニズムは今のところはっきりしていませんが、細菌を抗生物質で一時的に取り除いてもその破壊が止まるわけではありません。
アタッチメントロスが改善するのは細菌数の減少により、炎症症状が消退したことによる変化で、歯周炎の進行を止めたことにはならないでしょう。

結論

Conclusion

全身または局所に投与される抗生物質は、歯周治療の効果を高めることができます。
微生物の抗生物質耐性の発生を一般的に制限し、治療された個人に対する抗生物質の望ましくない全身作用のリスクを回避するために、抗生物質の使用に対する予防的な制限的態度が示されています。
それらの乱用を制限するために、完全な非外科的機械的創面切除のみで問題を解決できるという十分な証拠がある場合は常に抗生物質を処方しないことをお勧めします。
これは軽度から中等度の歯周炎の場合です。深部ポケットのSRPに追加の治療効果をもたらすことにより、全身抗生物質はさらなる外科的治療の必要性を減らすことができます。
全身性抗生物質は、機械療法に対する反応が不十分な症例の再治療における補助剤としても有用かもしれません。
局所的な非反応部位および局所的な再発性疾患は、局所的に送達される抗生物質で治療される場合があります。
すべての抗菌療法の前には、徹底的な機械的デブライドメント(SRP)を行う必要があります。
歯周感染の解消後、患者は再感染を防ぐために個別に調整されたメンテナンスケアプログラムに参加する必要があります。
現在、歯周治療で抗生物質を使用する最も完全に文書化されている方法は、補助的なアモキシシリンとメトロニダゾールを併用したSRPです。
特に慢性歯周炎患者では、メトロニダゾールを使用したSRPまたはアジスロマイシンを使用したSRPなどの他のプロトコルを検討する場合があります。

Antibiotics delivered either systemically or locally,can enhance the effect of periodontal therapy. To limit the development of microbial antibiotic resistance in general,and to avoid the risk of unwanted systemic effects of antibiotics for the treated individual, a precautionary restrictive attitude towards using antibiotics is indicated. To limit their overuse, it is recommended not to prescribe antibiotics whenever there is ample evidence that thorough non-surgical mechanical debridement alone can resolve the problem, and this is the case for mild-to-moderate periodontitis. By providing an additional treatment benefit for SRP in deep pockets, systemic antibiotics can reduce the need for further surgical therapy. Systemic antibiotics may be useful also as an adjunct in the retreatment of cases with unsatisfactory response to mechanical therapy. Localized non-responding sites and localized recurrent disease may be treated with locally delivered antibiotics. All antimicrobial therapy should be preceded by thorough mechanical debridement(SRP). After resolution of the periodontal infection, the patient should be placed on an individually tailored maintenance care program to prevent re-infection.
At present, the most thoroughly documented way of using antibiotics in periodontal therapy is SRP with adjunctive oral amoxicillin and metronidazole. Other protocols, including SRP with metronidazole or SRP with azithromycin may be considered, especially in chronic periodontitis patients.


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