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歯周病

歯周炎の個人的危険因子

2020年8月6日

特定の細菌が歯周炎の原因であるに違いないと考えられていた時代に、生体と細菌の相互の関係が歯周炎の発症に関与すると考えていた歯周病学者もいました。

Personal risk factors for generalized periodontitis.(歯周炎の個人的危険因子)という論文を書いたClarke NG,とHirsch RSの二人です 。

私自身はこの論文に共感を感じています。

Personal risk factors for generalized periodontitis.
Clarke NG, Hirsch RS.
J Clin Periodontol. 1995 Feb;22(2):136-45.

歯周炎の原因は細菌?

一般に歯周炎は宿主-寄生生物の不都合な相互作用と因果関係、つまり微生物が疾病の決定要因であると考えられています。

歯周炎の原因である特定あるいは非特定の細菌の徹底的な研究が続いています。歯周病のさまざまな病態は特定の細菌群と関連し、特定の細菌群によって引き起こされると広く信じられています。

Periodontitis is generally considered to be a consequence of an unfavourable host-parasite interaction in which bacteria are the determinants of disease.
An intense search continues for the bacteria, specific or non-specific, that are responsible for periodontitis and various forms of the periodontal diseases have been associated with, and are widely believed to be caused by, specific bacterial groups.

歯周炎は個人的要因に誘発される

しかし、歯周病原性細菌の分布は歯周炎の分布よりもはるかに広く、細菌と歯周炎の関連性が弱いことを示しています。

この論文では、‘宿主’リスクは微生物(病因)によってのみ誘発されるのではなく、むしろ宿主/寄生生物の関係の結果に影響する個人的要因によって誘発されるという、広汎性歯周炎の病因論の理論的枠組みを提案します。

ここで、「宿主」の要因は細菌によって引き起こされるものだけでなく、宿主/寄生体の関係の結果に影響を与える個人的な要因もあります。

宿主防御の効率を低下させる個人的要因には、社会環境からの心理社会的ストレス、食事、喫煙、アルコール依存症などのライフスタイルからの要因、および免疫/炎症システム内の併発疾患や欠乏などの全身的要因が含まれます

However, the distribution of periodontopathic bacteria is far wider than the distribution of periodontitis, indicating that the association between bacteria and periodontitis is weak.
The personal factors that diminish the efficiency of host defense may include psycho-social stress from the social environment, factors from the lifestyle such as diet, smoking and alcoholism and systemic factors such as intercurrent disease or deficiencies within the immune/inflammatory system.

個人的要因には社会的環境、ライフスタイル、全身的要因がある

生体の防御力を低下させる個人的要因には、社会環境からの心理社会的ストレス、食事、喫煙、アルコール依存症などのライフスタイルからの要因、および免疫/炎症システム内の併発疾患や欠乏などの全身的要因が含まれています。

The personal factors that diminish the efficiency of host defense may include psycho-social stress from the social environment, factors from the lifestyle such as diet, smoking and alcoholism and systemic factors such as intercurrent disease or deficiencies within the immune/inflammatory system.

個人的要因と社会的環境が歯周炎を発症させる

この論文では、個人的要因と社会的環境との相互作用が歯周炎発症の可能性を提供するというモデルを説明します。

生物学的多様性は重要です。ある人では広汎性歯周炎や他の慢性疾病を引き起こす要因の組み合わせであったとしても、他の人では歯周炎や他の慢性疾病を引き起こさないかもしれません。

A model is described in which the interaction of personal factors with the social environment provides the potential for the initiation of periodontitis.

Biological variation is significant and the combination of factors that cause generalized periodontitis or any other chronic disease in one individual may not result in dental or any other chronic disease in another.

心理・社会的因子ストレス

20世紀の後半、歯周炎は細菌因子だけでなくリスクファクターを考えなくてはいけないという考え方が広まり、Personal risk factors for generalized periodontitisの図を引用改変したものを多くの論文で見かけました。
上の図は「歯周病と全身の健康を考える(ライオン歯科衛生研究所編)2004」に掲載された「歯周炎の発症と生体防御はどのように関わるか(野口和行、石川烈)」からお借りしました。この図には『心理・社会的因子ストレス』とかなり大きく書かれているのですが、そのことが歯周病の治療で話題になることはまったくありませんでした。私はこのこの論文により、『心理・社会的因子ストレス』と安保免疫論がしっかりと結びつき、『細菌因子』と『ストレス』が歯周病の原因であると確信するようになりました。

歯周病の新常識
小西昭彦
阿部出版
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