歯科臨床の知

教科書通りではない現実

むし歯は一度できてしまうと、その穴は二度とふさがることはありません。

そして、その穴は徐々に、ときには急激に大きくなってしまうので、むし歯ができたら早めに削って詰めてしまうというのが、歯科治療の常識でした。

しかし、長い間歯科臨床に携わっていると、5年、10年経ってもそれほど広がらないむし歯がたくさんあることに気がつきます。

かえって、小さなむし歯を削って詰めたために、その周りがむし歯になって短期間の間に健康な歯を失ってしまった思われる症例に多数出会います。

また、歯みがきはきちんとしないし、歯石もあまりとったことがなくても、歯肉炎はあるけれど歯を支えている骨や歯根膜の破壊はそれほど進行していないという人も結構な数に上ります。

歯科臨床の知恵、そして歯科臨床の知

歯科学の教科書に載っていることや大学で教わることは決して間違っているわけではないのですが、それだけでは片付かない問題が歯科臨床には山積しています。

それらの難問を解決していくには、臨床の知恵と呼ばれるものが必要になります。

そのむし歯は削らないとどんどん進行してしまうのか削らなくても大丈夫なのか、その歯肉炎は自然に抜け落ちてしまうような歯周炎に移行するのかしないのかということを判断する眼です。

しかしそれらの知恵だけでは臨床はうまくいきません、歯科治療を進めていくにあたって必要な臨床哲学や歯科臨床に対する考え方をしっかりさせておかなければなりません。

それらの歯科臨床に必要な要素を統合する『歯科臨床の知』と呼んでもよい『知』の存在が必要なのではないかと考えています。

『歯科臨床の知』のカテゴリーではそれらに関する事項を取り上げていきたいと考えています。


 

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